量子色力学における自発的対称性の破れを厳密に実証

http://www.kek.jp/ja/news/press/2007/supercomputer2.html

現在の素粒子理論では、すべての素粒子は本来質量をもたない。クォークが質量をもつ仕組みには2段階あり、1つはヒッグス粒子の関係するヒッグス機構、もう1つがここで考えているカイラル対称性の自発的破れである。前者が物質の質量の2%をあたえ、これを種として後者が残りの98%をもたらす。

カイラル対称性の自発的破れは、南部陽一郎博士(シカゴ大名誉教授)が1961年に超伝導の理論にヒントを得て提唱した。超伝導のBCS(バーディーン・クーパー・シュリーファー)理論では、上向きスピンをもつ電子と下向きスピンをもつ電子がペアを作って金属中を埋めつくす。ペアとしての運動では電気抵抗をゼロにするほどスムースに動けるが、個別の電子は実効的に大きな質量をもつ。南部博士が量子色力学において提唱したのは、クォークと反クォークの対が宇宙全体を埋めつくすおかげでカイラル対称性が破れ、個々のクォークが実効的に大きな質量を得る、というアイデアであった。すなわち、宇宙は超伝導状態にあると考える。このとき、スムースに動けるペアとしての運動は比較的軽いパイ中間子として解釈される。