遠山啓・銀林浩編「わかるさんすうの教え方1,2,4,6」むぎ書房 (1976, 1978, 1983, 1990)

新宿駅西口の古本市にて購入.

「わかるさんすうの教え方1」

  • 日本の算数教育の誤りは藤沢利喜太郎がクロネッカーに師事したことに始まるという.明治38年国定教科書尋常小学校算術書で藤沢はクロネッカーの主張する「数え主義」を採用した.
  • 遠山は水道方式を提唱して「数え主義」に真っ向から異を唱えた.これは量の概念を根源的とする.数は序数より基数が基本になる.
  • 「仲間集め」から始めて「1対1対応」「どちらが多いか」.この段階では数詞「いち,に,さん,…」は不要.その後で数詞.
  • 暗算より筆算を重視.なぜなら筆算においては0の概念の重要性が明示的だから.
  • 数えは1から始まる.「数え主義」の弱点は0の概念.
  • 加法の意味は合併と増加の2つ.減法の意味は求残と求差の2つ.さらに求残には除去と求補がある.
  • 言語によらず式だけですべてを表現しようとする考えが次のように表明されている.

一般に,数学で問題を解くときは,その内容を忠実に数学的なものに表現する「数学式」がつくられ,次にそれを解く「計算式」が来て,最後に「答」ないしは「解」が求められる(p.14)

    • このように遠山算数が言語を忌避するのは,言語の使用が「数え主義」を引き寄せることを恐れたためだったのではないか.
    • 式は言語を介さずタイルを表現しているもの,それゆえ「数え主義」に汚されていないものと思いたいのだろう.
    • 第1桁,第2桁,第3桁,…,は序数.