線形代数学1

行列の簡約化.

  • 定義 「各行の0でない1番左の成分」を含む列が,左から順に, であるような行列を,簡約行列 という.
    • このとき,それ以外の列は,自分より左にある列の1次結合で書ける.
    • したがって,簡約行列であることは,「自分より左にある列の1次結合で書けない列」が左から順に, である,という条件に同値.
    • ただし,第1列については,「自分より左にある列の1次結合で書けない」とは0ベクトルでないことと定める.
  • 定理 任意の行列は,行基本変形により簡約行列に直せる.これを 行列の簡約化 という.
  • 証明 行基本変形により,以下の操作をおこなうことができる.
    • 0ベクトルではない1番左の列を, にする.
    • スカラー倍でない1番左の列を, にする.それより左の列は変えないようにする.
    • の1次結合で書けない1番左の列を, にする.それより左の列は変えないようにする.
    • の1次結合で書けない1番左の列を, にする.それより左の列は変えないようにする.
    • 以下同様につづければ,簡約行列が得られる.
  • 定理 行列の簡約化は,もとの行列に対し,ただ1つ定まる.
  • 証明
    • 行基本変形でうつりあう2つの簡約行列が一致することをいえばよい.
    • ある列が自分より左にある列の1次結合で書けるかどうか,および自分より左にある列の1次結合で書いたときの係数は,行基本変形によって不変である.
    • 簡約行列において,「自分より左にある列の1次結合で書けない列」は,左から順に, である.したがって,行基本変形でうつりあう2つの簡約行列の「自分より左にある列の1次結合で書けない列」は一致する.
    • 簡約行列において,「自分より左にある列の1次結合で書ける列」の成分は,その列を「自分より左にある列の1次結合で書けない列」 の1次結合で書いたときの係数である.したがって,行基本変形でうつりあう2つの簡約行列の「自分より左にある列の1次結合で書ける列」は一致する.