素数次対称群の部分群の単純性

p素数Gp 次対称群 S_p の部分群とする.
G\{1,\,2,\,\dots,\,p\} に推移的に作用するとする.これは G の位数 np で割り切れることに同値である.

定理 (R. J. Chapman, Amer. Math. Monthly, 1995)
n=pmr,\; rp より小さい素数m>1,\;m\equiv 1\,\mathrm{mod}\, p ならば,G単純群

応用として,以下の群が単純であることがわかる.

証明
G の Sylow p 部分群 Pp巡回群
r_G=|N_G(P)/P|,\;m_G=|G/N_G(P)| とおくと,n=pm_Gr_G.
m_GG の Sylow p 部分群の個数に等しいので,m_G\equiv 1\,\mathrm{mod}\,p.
N_{S_p}(P) は,有限体 F_p 上の1次アフィン変換群なので,位数は p(p-1).
よって r_Gp-1 の約数.特に [tex:r_G補題 m_G>1 ならば r_G>1.
証明 r_G=1 とせよ.G の位数 p の元は m_G(p-1)=n-m_G 個.
よって,G の元で \{1,\,2,\,\dots,\,p\} に固定点をもつものは,たかだか m_G 個.
一方,j\in\{1,\,2,\,\dots,\,p\} の stabilizer G_j の位数は m_G.
G_j の元は \{1,\,2,\,\dots,\,p\} に固定点をもつ.
よって G_1=\cdots=G_p でなければならないが,これは G_j が自明であることを意味する.よって m_G=1.//


n/pp で割った余りを r とすると,r=r_G.\; 特に rn/p の約数でなければならない.
定理の仮定のもと,r=r_G,\;m=m_G.

HG の自明でない正規部分群とする.
G\{1,\,2,\,\dots,\,p\} 上の H-orbit 全体の集合に推移的に作用する.
ゆえに H-orbit の点の個数はすべて等しく,H は自明でないので p に等しい.
したがって,H も \{1,\,2,\,\dots,\,p\} に推移的に作用する.
よって H の Sylow p 部分群は G の Sylow p 部分群になる.
G の Sylow p 部分群はすべて共役であり,H正規部分群なので,これらはすべて H にふくまれる.
よって m_H=m_G>1,\;r_H|r_G.
したがって補題より r_H>1. r=r_G素数なので,r_H=r_G.\; よって H=G. (証明終)