Poynting ベクトルと回路素子

  • 回路素子の両側の導線のまわりでは,
    • 電場は半径方向で電圧に比例する.
    • 磁場は回転方向で電流に比例する.
    • ポインティング・ベクトルは軸方向.コンデンサ・インダクタの場合,電圧と電流の位相が4分の1周期ずれるので,ゼロを中心に振動する.
    • LC回路では,コンデンサとインダクタがエネルギーをやりとりする.
  • 回路素子を囲む円筒面での電場・磁場・Poynting ベクトルについて.
    • 抵抗の場合,電流によって回転方向に磁場,電圧降下によって軸方向に電場が生じる.Poynting ベクトルは半径方向内向き.
    • コンデンサの場合,充電時は軸方向の電場が強まり,回転方向の磁場が生じ,Poynting ベクトルは半径方向内向き.
      放電時は軸方向の電場が弱まり,回転方向の磁場が生じ,Poynting ベクトルは半径方向外向き.
      • そもそも変位電流による磁場がなければ Poynting ベクトルが0なので,コンデンサがエネルギーを出し入れできない.
      • 静電気学は,電場のエネルギーが非常にゆっくり移動するという設定で考えるので,Poynting ベクトルは0.
    • インダクタの場合,内側の円筒面を考える.
      軸方向の磁場が強まるとき回転方向の電場が生じ,Poynting ベクトルは半径方向内向き.
      軸方向の磁場が弱まるとき回転方向の電場が生じ,Poynting ベクトルは半径方向外向き.
    • ダイポール・アンテナには,電流について固定端・電位について自由端の定在波が立つ.
    • ダイポール・アンテナで送信する場合,電流によって回転方向に磁場が生じる.その位相は電位と4分の1周期ずれる.
      電位はアンテナの中の部位によって異なる.電場は電位の軸方向の微分なので,磁場と位相が揃う.Poynting ベクトルは半径方向外向き.
    • ダイポール・アンテナで受信する場合,電磁波の軸方向の電場と半径方向の磁場は位相が揃っていて,Poynting ベクトルは半径方向内向き.電場がアンテナの中の自由電子にエネルギーを与える.磁場は電子に仕事をしない.
    • コンデンサやインダクタは,交流の周波数に対する電磁波の波長に比べて素子が十分小さいという設定で考えているが,ダイポール・アンテナはそうではない.コンデンサの2枚の極板の間の角度を広げてダイポール・アンテナに変形するような説明を見かけるが,よくない.