2013-10-31 計算化学 lect 角運動量はまわるいきおいを表す.古典力学では原点のまわりの角運動量は 楕円軌道の発見により,惑星の運動の原理であった天球が面積速度一定則にとって代わられる.角運動量は質量 × 面積速度. 電子は自転しているわけではないがスピン角運動量をもち,原子核のまわりをまわっているわけではないが軌道角運動量をもつ. Stern-Gerlach の実験より,スピン角運動量の成分は .これは角運動量の成分という量の変化がいつも の整数倍であることを示唆する. 軌道角運動量の成分は0を取りうると考えられる.よって軌道角運動量の成分は の整数倍だと考えられる. 原子核のまわりの電子の状態を, で表す. ベクトル はそれぞれ角運動量の 成分が である状態を表す.係数を 波動関数 という. 物理量(軌道角運動量・運動量・エネルギー)に対し,波動関数に作用する作用素を対応させ,その固有値が物理量の値,固有関数が物理量がその値をとる状態を表すとする. なおスピン角運動量に対応する作用素は Pauli 行列を用いて与えられる.これは の張るベクトル空間に作用する. 軌道角運動量に対応する作用素を,固有値が量子化されるような微分作用素に同定する. まず平面上の波動関数の場合に考える.Fourier 級数を思い出すと, がそのような作用素である. 3次元では, 軌道角運動量作用素を古典力学の場合と見比べて,運動量 に対応する作用素を に同定する. 運動量作用素の固有関数 は波を表す関数になる.電子は波である. エネルギーを運動量で表す式 に運動量作用素を代入すると,エネルギーに対応する作用素 (Hamiltonian) が得られる.その固有値問題として,Schrödinger 方程式 が得られる. Schrödinger 方程式は線形方程式. の場合,解空間の基底を具体的に与えることができる. 動径 r の関数が分子の大きさを,方角成分の関数(球面調和関数)が分子の形を決める.