上村静『旧約聖書と新約聖書』新教出版社 (2011)

宗教の倒錯―ユダヤ教・イエス・キリスト教 旧約聖書と新約聖書 (シリーズ神学への船出)

  • エノク書関連についてはためになった.
  • 「歯に衣着せぬ」キリスト教批判が続くが,全体として雑な印象は否めないし,二冊続けて読むと芸風に飽きてくる.
  • 旧約聖書の歴史記述を史実と区別せずに書いてあるため,イスラエルが権威づけられる形になった.そのためかなりイスラエル寄りのキリスト教論になっている.パレスチナ問題にちょっとだけ触れてはいるが,イスラエルのことを批判するより日本のあれやこれやを批判せよと締めている.
  • キリスト教全般,特にパウロを批判するがイエスの言動は現代社会に対する鋭い批判になっているとする,というスタンスはありがち.
  • 『福音と世界』4,5月号は上村氏責任編集.4月号は週刊金曜日というか新左翼の機関紙というか.上村氏の記事は葡萄園の労働者のたとえに寄せたもので,『宗教の倒錯』に載っているものに加筆したものだった.
  • キリスト教をぶっつぶせ」とでも言うかのようにして結局のところ護教論であるところが小泉さんを思わせる.新自由主義批判は新自由主義者に似てくる.
  • マルクスは『ユダヤ人問題によせて ヘーゲル法哲学批判序説』の中で,宗教を「倒錯した世界意識」と呼んでいる.