Weston による Zorn の補題の短い証明.

http://www.springerlink.com/content/h757506v44002719/

Zorn補題 任意の鎖(全順序部分集合)が上界をもつような順序集合は極大元をもつ.

  • Zorn補題は,真の上界をもたない鎖の存在から従う.そのような鎖の上界は極大元になるからである.
  • 順序集合 P の部分集合 C に対し,C の真の上界全体を C^ と書く.
  • 選択公理より,P の空でない部分集合にその元を対応させる写像 f が存在する.
  • P の鎖 K が f 鎖 であるとは,K の任意の部分集合 C で, C^ ∩ K が空でないものに対し, f (C^) が C^ ∩ K の最小元であることと定義する.
  • すべての f 鎖の和集合 L が鎖であって真の上界をもたないことを示す.
  • Claim: f 鎖 K , K' に対し,K' - K ⊂ K^.
  • Claimの証明:
    • K' - K の任意の元 a' に対し,
      C = { x ∈ K' | x < a' } ∩ K
      とおくと,
      C = { x ∈ K' | x ≤ a' } ∩ K .
      a' ∈ C^ ∩ K' より f (C^) ∈ { x ∈ K' | x ≤ a' }.
      よって f (C^) は K に属さない.
    • したがって C^ ∩ K は空.よって K の任意の元 x に対し,C の中に x の上界が存在する.
      a' は C の真の上界なので, x < a' をみたす.//
  • Claim より L は鎖.
  • L の部分集合 C に対し a ∈ C^ ∩ L とする.
    • a はある f 鎖 K の元.
    • 任意の x ∈ C に対し,x は K^ に属さないので,Claim より,x ∈ K.よって C ⊂ K.
    • よって f (C^) ∈ K ⊂ L かつ f (C^) ≤ a .したがって L は f 鎖.
  • L に真の上界があれば L に f (L^) を付け加えたものも f 鎖になって L の定義に矛盾.□
  • イデアは, f 鎖という概念を定義することと, Claim の証明における C の取り方.

http://d.hatena.ne.jp/yoshitake-h/20111210