場の局所性 - yoshitake-hのブログ

複素ベクトル空間 $M$ に係数をもつ $z_1,\,\dots,\,z_m$ の形式的べき級数全体のなすベクトル空間を $M[[z_1,\,\dots,\,z_m]]$ とし，
$M( (z_1,\,\dots,\,z_m) )=\bigcup_{n\geq 0}(z_1\cdots z_m)^{-n} M[[z_1,\,\dots,\,z_m]]$
とおく．

線型写像
$A(z)=\sum_{n\in \mathbb{Z}}A_nz^{-n-1} :M\to M( (z) )$
を， $M$ 上の作用素の場という．
$A(z)u\;(u\in M)$ は， $z=0$ にたかだか極をもつ．

場
$A(z)=\sum_{n\in \mathbb{Z}}A_nz^{-n-1},\quad B(z)=\sum_{n\in \mathbb{Z}}B_nz^{-n-1}$
に対し，積 $A(z)B(z)$ は一般に定義できないが，
$A(z)B(w) = \sum_{m,\,n}A_mB_nz^{-m-1}w^{-n-1}:M\to M( (z) )( (w) )$
$B(w)A(z) = \sum_{m,\,n} B_n A_m z^{-m-1}w^{-n-1}:M\to M( (w) )( (z) )$
は定義できる．
場 $A(z),\,B(w)$ がたがいに 局所的 であるとは，自然数 $N$ が存在して，
$(z-w)^N [A(z),\,B(w)]=0 : M\to M[[z,\,z^{-1},\,w,\,w^{-1}]]$
となることをいう．

$\delta (z-w) = \sum_{n\in \mathbb{Z}}w^nz^{-n-1}\in \mathbb{C}[[z,\,z^{-1},\,w,\,w^{-1}]]$
とおくと， $(z-w)\delta (z-w) =0.$
$(z-w)^{-1}$ の $\mathbb{C}( (z) )( (w) ) ,\; \mathbb{C}( (w) )( (z) )$ における展開を，それぞれ
$\varepsilon_w( (z-w)^{-1} ) = \sum_{n\geq 0} w^nz^{-n-1} ,\quad \varepsilon_z( (z-w)^{-1}) = -\sum_{n<0} w^nz^{-n-1}$
と書く．

場 $A(z),\,B(w)$ がたがいに局所的であるとき，
$M( (z) )( (w) )\cap M( (w) )( (z) )= M( (z,\,w) )$ に注意すると，
$(z-w)^N A(z)B(w) = (z-w)^N B(w)A(z) : M\to M( (z,\,w) ).$
したがって局所性は，
$A(z) \circ B(w)\in \mathrm{Hom}(M,\,M( (z,\,w) ) )[(z-w)^{-1}]$
が存在して，
$\varepsilon_w (A(z) \circ B(w) ) = A(z)B(w),\quad \varepsilon_z (A(z) \circ B(w) ) = B(w)A(z)$
がなりたつことに同値．

$z^{-1}=((z-w)+w)^{-1}$ の $\mathbb{C} ( (w) )( (z-w) )$ における展開を
$\varepsilon_{z-w} (z^{-1}) = \sum_{n\ge 0} (-1)^n(z-w)^nw^{-n-1}.$
とする．
$\varepsilon_{z-w} (A(z) \circ B(w) ) = \sum_{n< N}\sum_{m\in \mathbb{Z}} C_{m,\,n} w^{-m-1} (z-w)^{-n-1}$
を 作用素積展開 (OPE) という．

$z=w=0$ におけるブローアップ $z=tw$ をすると，
$A(tw) \circ B(w) \in \mathrm{Hom}\left( M,\,M[t,\,t^{-1}]( (w) ) \right)[(t-1)^{-1}].$
$A(tw) \circ B(w)\cdot t^k(t-1)^m \mathrm{d}t$ に留数定理を適用すると，Borcherds 恒等式
$\sum_{j\ge 0}\binom{k}{j}C_{n+k-j,\, m+j} = \sum_{j\ge 0} (-1)^j \binom{m}{j} (A_{k+m-j}B_{n+j} - (-1)^m B_{n+m-j}A_{k+j})$
がえられる．