電子の粒子性

電子の粒子性はどんな実験によって確かめられているのだろう? Millikan の油滴実験は,油滴の電荷が特定の値の整数倍になるというだけだし.Crookes が陰極線で羽根車をまわした実験は,電子の圧力ではなくラジオメータ効果らしいし.陰極線が電磁場によって曲がることは,陰極線を荷電粒子の流れとすれば説明がつくが,粒子性を確かめたとまでは言えまい.Schrödinger 方程式にベクトル・ポテンシャルを入れることができるのだから,電荷をもつ波が考えられないわけではない.そんなことを考えていろいろ検索していたら,宮沢弘成先生のサイトと霜田光一先生の論文にたどりついた.
http://www7.ocn.ne.jp/~miyazaw1/papers/papers.htm
http://jasosx.ils.uec.ac.jp/RLE/RLE/lsj1997/1997_04/lsj1997_04-320.pdf
http://jasosx.ils.uec.ac.jp/RLE/RLE/lsj1997/1997_05/lsj1997_05-387.pdf
http://jasosx.ils.uec.ac.jp/RLE/RLE/lsj1997/1997_06/lsj1997_06-442.pdf 光電効果コンプトン効果の波動論
http://jasosx.ils.uec.ac.jp/RLE/RLE/lsj1997/1997_07/lsj1997_07-531.pdf
そういえば朝永振一郎量子力学II」にも,1粒子の Schrödinger 方程式が古典場(de Broglie 場)の波動方程式と(物理的解釈は異なるが数学的には)同じであることが強調されていた.つまり,1粒子の Schrödinger 方程式で説明できる現象は,電子を古典的な波と見なしても説明できるということか.
結局,古典的粒子は一切放棄し,電子も光と同じく古典的には波と考えて,多体問題を考えるときは場の量子化をする,というのが筋がいいようだ.昔オオツカくんにすすめられた,鐸木康孝「理工系物理学」もその方針だった.
量子力学〈2〉 isbn:B000J8CCL8