光なしの相対論

  1. 2次元時空において,慣性系の間の原点を保つ座標変換は,速度でパラメトライズされる \mathbb{R} に同型な GL_2(\mathbb{R}) の部分群になる.
  2. 相対性原理の要請により,これが SL_2(\mathbb{R}) にふくまれることがわかる.
  3. SL_2(\mathbb{R}) の1次元連結部分群の共役類は分類され,そのうち \mathbb{R} に同型なものはローレンツ変換群かガリレイ変換群である.

慣性系 K,K' に関する時空の1点の位置と時刻をそれぞれ (x,t), (x',t') とする.

K に関して等速直線運動する質点は K' に関しても等速直線運動する.
したがって,座標変換は,直線 x=x_0+ut を直線 x'=x'_0+u't' にうつす.
また,たがいにまじわらない2直線は,たがいにまじわらない2直線にうつされる.
したがって,平行四辺形とその対角線は平行四辺形とその対角線にうつされる.
このことから,座標変換が1次式で書けることがわかる.
(x,t)=(0,0) のとき (x',t')=(0,0) であると仮定すると,座標変換は線型になる.

K' の位置の原点が K から見て速度 v で動くとすると,
x'=a(x-vt),\quad x=a(x'+vt') と書ける.
a が共通にとれるのは,相対性原理による.
a は速度 v の関数である.

x=a(a(x-vt)+vt') より,t'=-\frac{a^2-1}{av}x+at.
よって,座標変換 (x,t)\to (x',t') をあらわす行列を P(v) とすると,
P(v)=\left(\begin{array}{cc}a & -av \\ -\frac{a^2-1}{av} & a\end{array}\right).
P(v)行列式は1なので,G:=\{P(v)\mid v\in I\} (I は開区間)は \mathbb{R} に同型な,SL_2(\mathbb{R}) の部分群になる.

SL_2(\mathbb{R}) の1次元連結部分群は,リー環
sl_2(\mathbb{R})=\{\left(\begin{array}{cc}p_1 & p_2+p_3 \\ p_2-p_3 & -p_1\end{array}\right)\}
の1次元部分ベクトル空間に対応する.
SL_2(\mathbb{R}) の随伴作用は行列式 \delta:=-{p_1}^2-{p_2}^2+{p_3}^2 を保ち,軌道は
原点,一葉双曲面 \delta=\mathrm{const.}<0,
錐(頂点を除く)\delta=0, p_3>0;\quad \delta=0, p_3<0,
二葉双曲面の連結成分 \delta=\mathrm{const.}>0, p_3>0;\quad \delta=\mathrm{const.}>0, p_3<0
である.
したがって,sl_2(\mathbb{R}) の1次元部分ベクトル空間は,SL_2(\mathbb{R}) の随伴作用によって,
\mathbb{R}\left(\begin{array}{cc}0 & 1 \\ 1 & 0\end{array}\right),\quad \mathbb{R}\left(\begin{array}{cc}0 & 1 \\ 0 & 0\end{array}\right),\quad \mathbb{R}\left(\begin{array}{cc}0 & 1 \\ -1 & 0\end{array}\right)
のいずれかにうつる.
対応する SL_2(\mathbb{R}) の部分群は,それぞれ SO(1,1),\quad \left(\begin{array}{cc}1 & \mathbb{R} \\ 0 & 1\end{array}\right),\quad SO(2) である.
SO(2)\mathbb{R} と同型でないので,G は最初の2つのいずれかと共役になる.
したがって,P(v) は,ある (1,1) 計量に関するローレンツ変換か,ガリレイ変換になる.

N. D. Mermin, Am. J. Phys. 55, 585 (1984).