線形代数I

教科書,三宅敏恒 「入門線形代数isbn:9784563002169 がついに生協に届く.

  • この本で導入されている簡約な行列という概念は,次のように定義してもよい.

行列 A=(\mathbf{a}_1\;\cdots\;\mathbf{a}_n) の行の主成分(0でない成分のうち,もっとも左にあるもの)をふくむすべての列
[tex:\mathbf{a}_{i(1)},\dots,\mathbf{a}_{i(r)}\quad (i(1)<\cdots

  • 行基本変形による行列の簡約化の一意性の証明が,この本ではあとまわしになっているが,次のように列の個数に関する帰納法で示すことができる.

A=(\mathbf{a}_1\;\cdots\;\mathbf{a}_n) の簡約化を B=(\mathbf{b}_1\;\cdots\;\mathbf{b}_n) とする.

  1. \mathbf{a}_1=0 ならば \mathbf{b}_1=0. \mathbf{a}_1\neq 0 ならば \mathbf{b}_1=\mathbf{e}_1.
  2.  (\mathbf{a}_1\;\cdots\;\mathbf{a}_{k-1})\mathbf{x}=\mathbf{a}_k が解をもつならば,\mathbf{b}_k=(\mathbf{b}_1\;\cdots\;\mathbf{b}_{k-1})\mathbf{x}.
    解をもたないならば,\mathbf{b}_k=\mathbf{e}_r. ただし,(\mathbf{b}_1\;\cdots\;\mathbf{b}_{k-1}) の 0 でない行は r-1 個.
  • 行列の rank は,次のように列の個数に関して帰納的に定義することもできる.
  1. 列ベクトル \mathbf{b} に対し,\mathbf{b}=0 ならば \mathrm{rank}(\mathbf{b})=0. \mathbf{b}\neq 0 ならば \mathrm{rank}(\mathbf{b})=1.
  2.  A\mathbf{x}=\mathbf{b} が解をもつならば \mathrm{rank}(A\;\mathbf{b})=\mathrm{rank}(A).
    解をもたないならば \mathrm{rank}(A\;\mathbf{b})=\mathrm{rank}(A)+1.
  • 正方行列 A の簡約化が単位行列 E であるとき,(A\;E) の簡約化を (E\;C) とすると,AC=E.
    さらに CA=E であることの証明が,この本ではあとまわしになっているが,次のように示すことができる.

行基本変形が左から正方行列をかけることで実現できることから,BA=E となる正方行列 B の存在が言え,
B=BE=B(AC)=(BA)C=EC=C.