Sylow の定理

定義 有限群 G素数 p に対し,G の位数が p^km\;(p\not\mid m) であるとき,位数 p^kG の部分群を Gp-Sylow 群 という.

 GL_n(\mathbb{F}_p) の位数 (p^n-1)(p^n-p)\cdots (p^n-p^{n-1})p でちょうど 1+2+\cdots +(n-1) 回割り切れる.対角成分がすべて1である上三角行列全体のなす部分群を U とすると,U の位数は p^{1+2+\cdots +(n-1)} なので,UGL_n(\mathbb{F}_p)p-Sylow 群である.

定理 任意の有限群 G素数 p に対し,Gp-Sylow 群が存在し,それらはたがいに共役である.

補題 有限群 Gp-Sylow 群 SG の部分群 H に対し,G の元 g が存在して,H\cap gSg^{-1}Hp-Sylow 群になる.

証明 HG/S への左作用を考えると,G/S の元の個数 mp で割り切れないので,H の軌道で元の個数が p で割り切れないものが存在する.これを H(gS) とすると,H/H\cap gSg^{-1} から H(gS) への H 同変な全単射が誘導される.gSg^{-1} の部分群 H\cap gSg^{-1} の位数は p べきであり,また H/H\cap gSg^{-1} の元の個数は p で割り切れないので,H\cap gSg^{-1}Hp-Sylow 群である.//

定理の証明 G の位数を n とすると,G\subset GL_n(\mathbb{F}_p) と見なせる.GL_n(\mathbb{F}_p)p-Sylow 群が存在するので,補題より Gp-Sylow 群が存在する.それらがたがいに共役であることも補題からただちに従う.//

鈴木通夫「群論 上」岩波書店 (1977) より.isbn:4000052624