平方剰余の相互法則の Zolotareff による証明 (1872)

モリシタさんの講演で言及されていたもの.カネコさんから教わったとのこと.

平方剰余の相互法則

  • 素数 pp で割り切れない整数 n に対し, \left(\frac{n}{p}\right) を,

    x^2\equiv n\;(\mathrm{mod}\; p)
    となる整数 x が存在するとき 1,そうでないとき -1 をとるものとする.

  • 定理1 奇素数 p に対し,
    1. \left(\frac{mn}{p}\right)  = \left(\frac{m}{p}\right)\left(\frac{n}{p}\right)
    2. \left(\frac{-1}{p}\right) = (-1)^{\frac{p-1}{2} }
    3. \left(\frac{2}{p}\right)  = (-1)^{\frac{p^2-1}{8}}
  • 定理2 相異なる奇素数 p, q に対し,\left(\frac{q}{p}\right) = \left(\frac{p}{q}\right) (-1)^{\frac{p-1}{2}\cdot \frac{q-1}{2}}

置換の符号による平方剰余の表示

補題1 \left(\frac{n}{p}\right) は,n写像\mathbb{Z}/p\mathbb{Z} 上に誘導する置換の符号に等しい.

  • 証明
    • p を法とする原始根を r とすると,n\equiv r^k\;(\mathrm{mod}\;p) ならば,\left(\frac{n}{p}\right) = (-1)^k.
    • r の誘導する置換は,長さ p-1 の巡回置換.p が奇数なので,これは奇置換.//
  • 2つの置換の積の符号は各置換の符号の積に等しいことから,定理1(1) がしたがう.
  • -1写像の誘導する置換は, (p-1)/2 対の互換の積になることから,定理1(2) がしたがう.
  • p=2k+1 とおくと,順列 2, 4, \dots, 2k, 1, 3, \cdots, 2k-1 の符号は (-1)^{k(k+1)/2} = (-1)^{\frac{p^2-1}{8}}.
    これから定理1(3) がしたがう.

相互法則の証明

  • 1\leq i\leq q,\;1\leq j\leq p に対し,(i-1)p+(j-1)qpq で割った余りを 0\leq r_{i, j} < pq とおく.

補題2 0,1,\dots,pq-1 の並べかえ

r_{1,1},r_{1,2},\dots,r_{1,p},r_{2,1},\dots,r_{2,p},\dots,r_{q,1},\dots,r_{q,p}
の符号は \left(\frac{q}{p}\right) に一致する.

  • 証明
    • 行列 (r_{i, j}) の列ベクトルの第 [tex:i(
    • q が奇数なので,c は偶置換.
    • 行列 (r_{i, j}) の列ベクトルにそれぞれ巡回置換 c を何回かほどこして,第1行の成分がすべて p より小さくなるようにできる.これを (r'_{i, j}) とおく.
    • 行列 (r'_{i, j}) の各行に対し,これを小さい順に並べ替える置換は,q写像\mathbb{Z}/p\mathbb{Z} に誘導する置換と同じ.

      行の数 q は奇数なので,補題2がしたがう.//

  • たとえば p=7,\;q=5 の場合,

    (r_{i,j})=\left(\begin{array}{ccccccc} 0&5&10&15&20&25&30\\ 7&12&17&22&27&32&2\\ 14&19&24&29&34&4&9\\ 21&26&31&1&6&11&16\\ 28&33&3&8&13&18&23\end{array}\right),

    (r'_{i,j})=\left(\begin{array}{ccccccc} 0&5&3&1&6&4&2 \\ 7&12&10&8&13&11&9\\ 14&19&17&15&20&18&16\\ 21&26&24&22&27&25&23\\ 28&33&31&29&34&32&30\end{array}\right).

補題3 \{(i,j)\mid\; 1\leq i\leq q,\;1\leq j\leq p\} の辞書式順序による並べ方で,第1成分を優先するものと第2成分を優先するものとの間の置換の符号は,(-1)^{\frac{q(q-1)}{2}\cdot \frac{p(p-1)}{2} に等しい.

  • 証明 大小関係が2つの辞書式順序で異なる対の個数は,

    \frac{q(q-1)}{2}\cdot \frac{p(p-1)}{2}. //

  • p,q が奇数なので,\frac{q(q-1)}{2}\cdot \frac{p(p-1)}{2} \equiv \frac{q-1}{2}\cdot \frac{p-1}{2}\;(\mathrm{mod}\;2).
  • 補題2,3から定理2がしたがう.(証明終)