Spin structures on hyperelliptic curves

以下は,Mumford, Tata Lectures on Theta, II にある定理の位相的な証明.
Tata Lectures on Theta II (Modern Birkhauser Classics)

向きづけられた曲面 M のスピン構造は,単位接ベクトル束 U の fiberwise double covering U~ である.
M 上の向きとスピン構造を保つ involution t の U への作用は,Z/4 の U~ への作用によって cover される.M 上の t の固定点 p に対し,ファイバー U~p への Z/4 作用を考える. Z/4 のどちらの生成元が正の向きの 90 度回転なのかによって,固定点集合 Mt は2つに分かれる.
例.cylinder I× S1 のスピン構造は2つあり,境界の各連結成分に誘導されるスピン構造が null-cobordant か否かで区別される.前者を偶,後者を奇とよぼう.cylinder への向きを保つ involution で,境界の2つの連結成分を入れかえ,固定点が2つであるものを考える.

補題2つの固定点上のファイバーへの Z/4 作用は,偶スピン構造の場合たがいに逆向き,奇の場合は同じ向きになる.

M を種数 g の閉曲面,t を hyperelliptic involution とすると,Mt は 2g+2 点からなる.これが g+1+n 点と g+1-n 点に分かれるとする.

命題.n は偶数.
証明.上の例の cylinder g+1 個の直和を Z/2 同変に M に埋めこむ.補空間に hyperelliptic involution は free に作用し,商にスピン構造が誘導される.したがって,g+1 個の cylinder 上のスピン構造のうち,奇なものは偶数個.補題より n が偶数であることがしたがう.//

系.hyperelliptic curve のスピン構造は,固定点集合を,個数の差が 4 で割り切れるような2つの集合に分ける分け方と1対1対応する.
証明.前者の集合と後者の集合はいずれも 22g 個の元をもつ.上の議論により,前者の集合から後者の集合への写像が定義されるが,これは全射になることがわかる.//

定理.n が 4 の倍数のとき,M のスピン構造は null-cobordant,4 の倍数でないとき,null-cobordant でない.
証明の概略.H1(M, Z/2) 上の2次形式 Q を,M に埋めこまれた cylinder に誘導されるスピン構造の偶奇によって定義する.その Arf 不変量で M のスピン構造が null-cobordant かどうかを判定できる.一方,Q の Arf 不変量は n/2 mod. 2 に等しいことがわかる.//