スピンとスピン量子数,方位量子数と磁気量子数,光速――本質と偶有性

「電子はスピン1/2の粒子である」というのは電子の本質的属性であり,「スピン量子数が +1/2 である/-1/2 である」というのは偶有的属性(自由度)である.前者は,合同変換群(の2重被覆) の2次元既約表現(ただし の表現に落ちている)のベクトルが電子の状態をあらわしていることを意味する.後者はこの表現を に制限したときの,1次元表現への既約分解の2つの成分に対応していて,「 から に対称性を破るもの(たとえば不均一な磁場)」と電子の位置関係をあらわす.
主量子数・方位量子数・磁気量子数も偶有的属性である.このうち方位量子数は, の既約表現の種類をあらわすという点では,本質的属性であるスピンと同じだが,この場合の の商群ではなく部分群である.方位量子数は「 から に対称性を破るもの(たとえば原子核)」と電子の位置関係をあらわす.さらに磁気量子数は「 から に対称性を破るもの」と電子の位置関係をあらわす.
「光の速さが 299,792,458 m/s である」というのは光の本質的属性であり,質量をもつ粒子の速さが偶有的属性であるのとは事情が異なる.質量をもつ粒子の速さは「対称性を破るもの(たとえば他の質量をもつ粒子)」との位置関係だが,光の速さはそうではない.